大阪地方裁判所 昭和46年(わ)913号 判決 1974年8月06日
一、本店所在地
大阪市北区曾根崎上一丁目三七番地の一
商号
大阪森田ゴルフ株式会社
代表者
森田真左利
二、本籍
姫路市神屋町一丁目一〇三番地の二
住居
大阪市北区曾根崎上一丁目三七番地の一
職業
会社員
かずゑこと
森田かづゑ
昭和三年七月五日生
右の者に対する法人税法違反被告事件につき当裁判所は検察官安部正義出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人大阪森田ゴルフ株式会社を罰金五〇〇万円に、
被告人森田かづゑを懲役八月に
各処する。
但し、被告人森田かづゑに対し、この裁判確定の日から二年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人大阪森田ゴルフ株式会社は、大阪市北区曾根崎上一丁目三七番地の一に本店を置き、ゴルフ用具等の販売を業とするもの、被告人森田かづゑは、昭和四五年八月二二日まで、右大阪森田ゴルフ株式会社の代表取締役としてその業務全般を統轄していたものであるが、被告人森田かづゑは、被告人大阪森田ゴルフ株式会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、
第一、被告人大阪森田ゴルフ株式会社の昭和四二年二月一日から昭和四三年一月三一日までの事業年度において、その所得金額が一一、六五四、二二〇円、これに対する法人税額が三、八三九、三〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上売上の一部を除外し、人件費及び仕入を架空計上するなどの行為により、右所得金額中一一、四二七、五七七円を秘匿したうえ、昭和四三年四月一日大阪市北区北税務署において、同署長に対し、右事業年度の所得金額が二二六、六四三円、これに対する法人税額が三三、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により法人税三、八〇五、七〇〇円を免れ、
第二、被告人大阪森田ゴルフ株式会社の昭和四三年二月一日から昭和四四年一月三一日までの事業年度において、その所得金額が、三〇、六一一、四六一円、これに対する法人税額が一〇、四四四、九〇〇円であるのにかかわらず、前同様の行為により、右所得金額中三〇、〇九六、五一一円を秘匿したうえ、昭和四四年三月三一日前記北税務署において、同署長に対し、右事業年度の所得金額が五二四、九五〇円、これに対する法人税額が八四、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により法人税一〇、三六〇、六〇〇円を免れ、
第三、被告人大阪森田ゴルフ株式会社の昭和四四年二月一日から昭和四五年一月三一日までの事業年度において、その所得金額が二〇、四四五、四三二円、これに対する法人税額が六、七一五、七〇〇円であるのにかかわらず、前同様の行為により、右所得金額中一九、三八〇、六二六円を秘匿したうえ、昭和四五年三月三一日前記北税務署において、同署長に対し、右事業年度の所得金額が一、〇六四、八〇六円、これに対する法人税額が六七、九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により法人税六、六四七、八〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一、被告人森田かづゑの当公判廷における供述
一、同被告人の検察官に対する昭和四六年三月一六日付(二通)、同月一八日付(三通)、同月二二日付(二通)、同月二六日付(三通)、同月二七日付各供述調書
一、同被告人の収税官吏に対する質問てん末書四通ならびに上申書
一、証人森田真左利の当公判廷における供述ならびに供述記載
一、森田真左利の検察官に対する昭和四六年三月二〇日付供述調書
一、同人の収税官吏に対する昭和四五年一一月二四日付質問てんまつ書
一、証人赤星義春、同吉村光弘、同井村紘に対する当裁判所の尋問調書
一、池野誠吉の検察官に対する供述調書五通
一、同人の収税官吏に対する質問てん末書三通
一、松本幸雄、小田信行、大内平蔵、加藤信夫、海辺一郎、野村昭、若林正道の収税官吏に対する各供述書
一、三枝洪二、土屋一男、安井明、確井力、藤掛修、中崎健二郎(三通)、浜田美照、落合清隆(二通)、沖電気工業株式会社関口、株式会社大隈鉄工所山川、三菱信託銀行株式会社証券代行部(三通)、中森孝一、近畿日本鉄道株式会社植松、泉豊、久保田鉄工株式会社、株式会社小糸製作所、後藤恵美子、山水電気株式会社、蛇の目ミシン工業株式会社、株式会社資生堂、三井信託銀行(二通)、西弘子(二通)、八田弘子、三井信託銀行前田、中央信託銀行菅沼、東陶機器株式会社、中央信託銀行岡、凸版印刷株式会社守谷、中央信託銀行佐々木、住友信託銀行東京証券代行部、日本飛行機株式会社、白井俊明、藤田進、中央信託銀行山口、西田義郎、大阪証券代行株式会社宮野、富士通株式会社、東洋信託銀行藤原、平和不動産株式会社、中央信託銀行大阪支店、大阪証券代行株式会社、中央信託銀行証券代行部(二通)、小山研三、安田信託銀行証券代行部(二通)、太期治、笠原勇二の収税官吏に対する各回答書
一、押収にかかる住友銀行梅新支店取引関係メモ一綴、預金関係メモ一綴、住友信託井村紘からの書簡一通、総勘定元帳(42/1期)、同(43/1期)、同(44/1期)各一綴、補助元帳(44/1期)、同(45/1期)、各一綴、振替伝票綴(45/1期)、同(43/1期)、同(44/1期)各一二綴、源泉徴収簿(42年分)、同43年分)各一綴、給料計算表綴(43/1~45/1)一綴、給与所得税、退職所得税に対する源泉徴収簿一冊、昭和四三年度源泉徴収台帳一冊、支払小切手帳の原符八冊、支払手形控四冊、領収証綴(43/7~43/9)、同(43/4~43/6)、同(43/1~43/3)各一綴(当裁判所昭和四七年押第一八一号符号一ないし三、七ないし一一、一九ないし一一、二三ないし二五、二七ないし三三)
一、収税官吏川端澄外四名作成の査察官総勘定元帳
判示第一の事実につき
一、北税務署長宮崎正郎作成の証明書(但し昭和四二年二月一日から昭和四三年一月三一日までの法人税確定申告に関する分)
一、押収にかかる決算資料等一綴(当裁判所昭和四七年押第一八一号符号二六)
判示第一、第二の各事実につき
一、押収にかかる総勘定元帳、補助元帳、経費帳二綴、金銭出納帳一冊、総勘定元帳一綴(当裁判所昭和四七年押第一八一号符号一五ないし一八)
判示第二の事実につき
一、北税務署長宮崎正郎作成の証明書(但し昭和四三年二月一日から昭和四四年一月三一日までの法人税確定申告に関する分)
一、押収にかかる仕入請求書、領収証綴(45/1期、43.2.1~44.1.31まで)三綴(当裁判所昭和四七年押第一八一号符号二二)
判示第二、第三の各事実につき
一、被告人森田かづゑ作成の上申書
一、証人石倉由紀男に対する当裁判所の尋問調書
一、石倉由紀男の検察官に対する供述調書
一、押収にかかる重要ノート三冊(当裁判所昭和四七年押第一八一号符号四ないし六)
判示第三の事実につき
一、北税務署長宮崎正郎作成の証明書(但し昭和四四年二月一日から昭和四五年一月三一日までの法人税確定申告に関する分)
一、押収にかかる振替伝票(共立病院分)一綴(当裁判所昭和四七年押第一八一号符号一四)
(法令の適用)
被告人らの判示各所為は、いずれも法人税法一五九条、七四条一項二号(法人の処罰につき、なお一六四条一項)に該当するところ、被告人会社については、以上の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により所定罰金額を合算した金額の範囲内で被告人会社を罰金五〇〇万円に処し、被告人森田かづゑについては所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上の各罪は同法四五条前段の併合罪であるから同法四七条、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした所定刑期の範囲内で同被告人を懲役八月に処し、諸般の情状に鑑み同法二五条一項一号を適用して、この裁判確定の日から二年間その刑の執行を猶予することとする。
(弁護人の主張に対する判断)
一、貸付金について
弁護人は、森田真左利が経営していた協立病院の薬品仕入先である明快薬品株式会社からは少くとも昭和四〇年二月から昭和四三年六月までの間、合計一、五一〇万円の薬品代金水増請求による戻し金(以下単にリベートと称する)があつて、それが被告人会社の収入となり株の投資運用に充てられていた。そして本件起訴年度の昭和四二年度及び昭和四三年度中における被告人会社が受取つたリベートは合計七二〇万円になり、これに相応する金額は当然被告人会社の両年度における所得金額から減額されるべきである。と主張するので検討するに、前掲証人森田真左利の当公判廷における供述ならびに証人札場孝司、同野口博の同公判廷における各供述及び前掲押収にかかる支払小切手帳の原符八冊、支払手形四冊、領収証綴(43/7~43/9)、同(43/4~43/6)、同(43/1~43/3)各一綴、弁護人提出の売掛台帳(昭和四〇年度第九期後期)、同(昭和四〇年度第一〇期前期)、同(昭和四〇年度第一〇期後期)、同(昭和四一年度第一一期前期)、同(昭和四一年度第一一期後期)、同(昭和四二年度第一二期)、同(昭和四三年度第一三期)を総合すると、弁護人主張のとおり右協立病院が明快薬品株式会社からリベートを受領していた事実はこれを優に認めるに足り、その金額は昭和四二年度において四四〇万円、昭和四三年度において二〇〇万円と認められる。そしてこれらの金額は森田真左利個人の収入金であるから、被告人会社の貸付金から昭和四二年度四四〇万円、昭和四三年度二〇〇万円を減額するのが相当であり、右の範囲内において弁護人の主張は理由がある。
二、買掛金について
弁護人は、被告人会社が石倉由紀男に前払いしたゴルフ道具(マグレガー製クラブ)の仕入代金二〇〇万円について、右石倉はこれに相当する右商品を納入しなかつたから、同人に前払いした右仕入代金二〇〇万円については、被告人会社の昭和四四年度の決算において貸倒損として損金の処理がなされるべきである。と主張するので検討するに、前掲収税官吏川端澄外四名作成の査察官総勘定元帳によれば、右前渡金二〇〇万円については昭和四三、四四年度各期末の買掛金勘定に計上されている(本来前渡金勘定で処理すべきものを、買掛金勘定のマイナスとして計上されていたもの)ところであるが、前掲石倉由紀男に対する当裁判所の尋問調書ならびに同人の検察官に対する供述調書を総合すると、右石倉は被告人会社より昭和四三年一二月に弁護人主張のような前渡金二〇〇万円の支払を受け、昭和四四年一月に一〇〇万円相当の商品を納入したが、その後同人が倒産したため残額一〇〇万円相当の商品は納入しないまま現在に至つていることが認められる。従つて右買掛金については昭和四三年度一〇〇万円、昭和四四年度一〇〇万円をそれぞれ増額してこれを認定すべきもので、その範囲内において弁護人の主張は理由がある。
三、その余の弁護人主張にかかる協立病院の人件費、被告人会社の期首財産については、弁護人の全立証を以てしてもこれを認めるに充分でないからいずれも採用し難い。
四、前記一、二において認定したところから、被告人会社の所得金額が減少することとなるに伴つて、被告人会社の未払事業税につき、昭和四三年度五二万八、〇〇〇円、昭和四四年度二九万六、六〇〇円をそれぞれ減額すべきであることは計算上明らかである。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 橋本達彦)
右は謄本である。
昭和四九年一〇月二五日
大阪地方裁判所第一二刑事部三係
裁判所書記官 田村剛